【省エネ住宅義務化】新築で注意すべき断熱性能を決める5つのポイントとは!?

はじめに

家の断熱性能を高める基礎知識として、どこを注意すればよいかご存知でしょうか?
近い将来、新築住宅では高い断熱性能が義務化されます。費用も高くなってきますので、どこにお金をかけたら良いのか迷ってしまいますよね。
断熱性能を高めるためには適切な場所に効果的な断熱を行う必要があります。この記事では住宅の断熱性能を高めるために外すことのできない5カ所を中心に解説しています。
この記事を読めば断熱性能の効果と、断熱性能を高めるために必要なポイントが分かるようになります。
新築を立てる際に、断熱性能をどうしたらいいのか、基礎知識とポイントを知りたい人は参考にしてください。

1)断熱の必要性とは?

/// 1-1.高い断熱性能が義務化

今後住宅では高い水準の断熱性能や省エネ化が必須とされていきます。
日本では2023年までに大幅な温室効果削減を目標に掲げています。この目標達成を背景に、2022年「改正建築物省エネ法」が公布されました。住宅の省エネ性能の義務化が決定し、その基準は2025年~2030年にかけて引き上げられます。

・2025年=現在の省エネ住宅の基準
・2030年=現在のZEH住宅の基準

/// 1-2.「省エネ住宅」とは

断熱性能が高く、1年を通して外気と室内で熱の出入りが少ない住宅を省エネ住宅と呼びます。
国の基準として「断熱性能等級」というものが定められていて、熱の出入りを数値で測定し、効果の高い住宅ほど大きい数字の等級になります。改正前までは「等級4」が最高でしたが改正後では「等級7」まで新設されます。
古い最高基準だった「等級4」が2025年には省エネ住宅の最低ラインになります。

/// 1-3.「ZEH住宅」とは

ZEHとは「zero energy house」の略で、省エネと発電を兼ね備えた住宅のことです。
ゼロエネルギーの示す意義は、全てを自家発電で頼るといういいではありません。消費するエネルギーと自家発電によって得られるエネルギーを通算して「0」に近い値にすることができるということです。
今後ZEH基準の住宅が義務化されるということは、電力の消費と生産を「0」に近づけるために消費を極力減らす省エネと、消費に近い電力を発電する機能が住宅に求められていきます。 

/// 1-4.旧基準は資産価値が下がる

今後省エネ基準やZEH基準が義務化されることによって、基準に満たない住宅は資産価値が低くなってしまう可能性があります。
基準に満たない住宅は法的な優遇を受けにくくなります。また増改築や利用方法によっては修繕や建て替えが必要になる場合も出てくるのです。
省エネだとピンとこないという人は古い耐震性の住宅で例えて考えてみましょう。古い耐震性の住宅を好んで購入する人はいません。増改築や商業利用の際には基準を満たす改築が必要で費用もかかります。
将来的なことを考えても、省エネ住宅やZEH住宅の基準を満たす必要性は高いと言えます。

2)断熱性能を高めるポイント

家の断熱性能を高める目的は義務化やCO2対策のためだけではありません。生活に関するメリット・デメリットについても理解しておきましょう。断熱に関する費用を何のために使うのか、また費用の考え方の基準にもなります。決められたルールの中でもやみくもに基準を守ることに費用を使うのと、目的やメリットを理解してルールを守るのとでは、効果も費用の使い方も違ってきますよね。
断熱性能を高めるためには断熱材の種類、使う場所、効果等様々な選択肢があります。メリットは効果的に、デメリットは最小限になる選択を行っていきましょう。

/// 2-1.メリット

生活環境が快適になる

断熱効果によって温度変化が少なくなり、快適な生活空間を保ちやすくなります。断熱された屋内は外気の影響が少なくなります。エアコンやストーブを使用して快適な温度になった後も室温を効率的に保つことができます。

光熱費が安くなる

断熱性能の高い室内は温度変化が少ないので、空調機器の使用頻度が減って光熱費が安くなります。外気の影響を遮断するので冷暖房を使用する機会が減ります。冷暖房を使用した後も室温の変化が少なく、冷暖房の稼働効率が上がり、消費電力を抑えられます。

将来的な住宅の価値が高くなる

制度の変化によって住宅の価値が変わってきます。将来まで通用する断熱性を備えておくことで将来的に家の価値が下がるのを予防し、他の旧制度にしか適応していない住宅より価値を高めることができます。

/// 2-2.デメリット

初期費用が高くなる

断熱性能の高い住宅を作るためには従来基準の住宅を建てるより費用がかかります。断熱性能の高い家にするためには性能の良い断熱材と多くの資材が必要になります。またしっかりとした断熱性能を得るには施工店の技術も必要です。これらのことかから断熱性能の高い家を作るためにはどうしても初期費用が高くなります。

省エネで費用を回収できるとはかぎらない

省エネ効果によって初期費用を回収できるとは限らないことがあります。省エネによって初期費用を回収するためには不確定な要素がいくつか存在していることを知っておきましょう。
例えば省エネ効果は地域によって異なります。従来の家より省エネ効果があったとしても初期費用を補うほどの省エネ効果があるとは限らないのです。また電気代の高騰、断熱材や発電設備の故障、災害などもあります。断熱にかけた費用が確実に省エネで回収できるとは限らないことを前提に予算を考えることも大切です。

場所や種類が多すぎて分かりにくい

断熱性能の高い住宅は性能の高い断熱材を使用すればいいわけではありません。効果的な場所に適しただ断熱材を、しっかりとした技術で施工すること必要があります。こうした知識なしで全て設計者、施工店任せにしてしまうと思ったより費用が大きくなってしまうこともあります。
住宅の断熱性のについて詳しく知っている人は多くありません。基本的な知識だけで十分ですのでしっかりと身につけて、詳細は設計事務所や施工店と相談できるようにしましょう。

住宅の断熱性能に関する基本的な知識は次章の「住宅の断熱性に重要な5カ所」から確認してください。

/// 2-3.住宅の断熱性に重要な5カ所

住宅内部には室内の影響を受けやすい場所があります。断熱では外からの影響を少なくすることで効果を発揮します。住宅で外からの影響を受けやすいのは次の5カ所です。

・外壁
・床
・屋根
・窓
・玄関

建物の断熱性能を高めるには外からの影響を受けないために、周囲を囲む外壁、上下の床と屋根に断熱が必要です。そして断熱の穴となってしまう大きな要素、窓と玄関にも断熱を行います。
次の章からはこの「断熱性に重要な5カ所」について、それぞれ断熱への影響とどのような種類の工法があるのかについて解説しています。断熱性能が高い家づくりの基本知識として参考にしてください。

3)外壁の断熱

/// 3-1.外壁断熱のポイント

外壁断熱では特に工法や扱う素材にこだわりましょう。外壁は住宅で最もの環境に接する面積が大きい場所です。断熱工法や素材によって費用や効果が大きく変わってきます。
外壁材は厚みが大切とされています。厚みが大きいと壁が厚くなり住空間を圧迫してしまうことがあるからです。外壁の色や使用する外壁材によっても断熱や省エネ効果に影響を与える場合があります。

塗装や外壁の素材でも断熱効果のあるものが存在します。外壁の色や素材は建物の熱に大きく影響を与えます。例えば黒い外壁は熱を集めやすく、金属の外壁は熱を伝えやすい特徴があります。それに反して熱を伝えにくい素材の塗料や外壁材もあります。

熱を伝えにくい外壁例
・ホワイトや明るい色の外壁
・遮熱、断熱成分の入った塗料で塗装された外壁
・ALC、木材など熱を伝えにくい素材を使用した外壁

外壁は建物で最も面積が大きい場所なので様々な断熱方法があります。しかし、あれもこれも取り入れようとすると費用ばかり膨らんでしまうので注意しましょう。外壁は断熱材を使用した断熱が最も効果的です。塗料や外壁材は断熱材ではありません。あくまで補助的な要素として考えるようにしましょう。

外壁の断熱工法には「外断熱工法」と「内断熱工法」があります。それぞれ効果や特徴が異なるので確認しておきましょう。

/// 3-2.外断熱工法

壁の柱より外側、外壁側に断熱材を施工する工法です。外側に近い部分から断熱を行うことで効率よく断熱できます。柱の外側に断熱材を敷き詰め建物全体を包み込むので、高い断熱性能を発揮する工法です。
外側に断熱材を入れるので室内を圧迫するリスクを軽減できます。一般的には内断熱より費用は高くなります。施工は新築時が好ましく、後からリフォームで外断熱を行う際は壁を壊す必要があり、大規模な工事となってしまいます。

/// 3-3.内断熱工法

壁の柱より内側、室内側に断熱材を施工する工法です。断熱が必要な部分、室内に的を絞った断熱を行うことができます。室内側から断熱を行うため柱の部分からの熱の影響を受けないように対策が必要です。そのため外断熱と比較して全体的な断熱効果は劣ってしまいます。施工を依頼する際は断熱材の隙間をどのように埋めるのかをよく確認しておきましょう。
室内側に断熱材を入れるので外壁の種類や構造を自由にすることができます。断熱材の入れ替えが外壁を壊さずに行うことができるのでリフォームや簡易的な修繕もしやすい工法です。
内断熱工法は室内を圧迫しやすいので断熱材の厚みにも気をつけましょう。

4)床の断熱

/// 4-1.床断熱のポイント

床の温度は床下を流れる空気の流れと地面から熱の影響を受けます。この影響をどのように防ぐかがポイントです。
外壁や他の部分の断熱性能をどれだけ高めても下からの断熱が無防備では快適に調整した室温が床から逃げてしまいます。アウトドアでもクーラーボックスを熱い地面に直接置かないほうが長持ちするように、建物も下からの熱は全体に大きな影響を及ぼします。

床は家のどの部分よりも人の体が直接触れる機会が多い場所でもあります。体温に直接影響を与えやすく、特に冬場のヒートショックには注意が促されるほどです。床下は外気の影響を受けにくいように見えますが、地面と直接つながっている部分であり、温度変化の影響を受けやすい場所であることを覚えておきましょう。

床下には通気などによって外とつながっています。建物としては屋外の扱いになります。床下は建物の湿度を調整する役割をもった空間です。床の断熱を行うには床下からの熱をどのように遮断するかで決まります。基本的な工法として「床断熱工法」と「基礎断熱工法」があります。それぞれの違いについて確認しておきましょう。

/// 4-2.床断熱工法

床断熱工法は床板の下に断熱材を充填する工法です。床を断熱して床下からの熱の影響を遮断します。床下はそのままなので工事は小規模で行うことができます。そのため基礎断熱より費用は安く済みます。築年数が古い建物でもリフォームの際に最低限の改築で済みます。床下の風通しも良く、家の機能を健全に保つことができる工法です。
基礎断熱と比較して、断熱効果は低くなります。床下を流れる空気や地面からの熱はそのままなので柱部や床のつなぎ目から熱が伝わりやすい特徴があります。

/// 4-3.基礎断熱工法

基礎断熱工法は基礎の部分に断熱材を取り付ける工法です。建物の基礎から断熱するので床下全面を覆うことができます。基礎から断熱することで床まで熱が届きにくく高い断熱効果を発揮します。
基礎断熱工法には基礎の外側から断熱する外基礎断熱と、基礎の内側である床下面を断熱する内基礎断熱があります。基礎断熱では床下本来の機能である湿度の調整ができなくなるためシロアリやカビなどが発生しやすくなります。そのため基礎断熱工法を行う際はシロアリの侵入を防ぐ内基礎断熱が主流となっています。

基礎断熱工法は床断熱工法より高い断熱性能を持っていますが、湿気をどのように逃がすのか、建物の構造に関連することなので建築時によく確認しましょう。
大きなデメリットとして、床下に気密をつくることで万が一水害に遭ってしまうと侵入した水を乾かすのが難しい特徴があります。水害に遭う可能性がある地域ではよく検討しましょう。

5)屋根の断熱

/// 5-1.屋根断熱のポイント

屋根の断熱では日光による熱を適切に遮断することがポイントです。屋根は建物で最も日光を浴び、最も熱くなりやすい場所です。快適な暮らしには、冬の寒い日に家を温めてくれるよりも、夏の強い日差しが家全体を熱くしてしまうことの方が深刻な問題となります。熱くなった家を冷やすためにはエアコンなどを使い、長時間大きなエネルギーを消費しなければなりません。

屋根の断熱では「遮熱」も必要になります。熱を伝わりにくくする断熱に対して、熱を反射して熱をため込まないのが「遮熱」です。日中温められた屋根は屋根裏や建物の上階にその熱気を蓄積し、夜中まで熱を保持し続けてしまいます。屋根の断熱性能は夏場を中心に建物全体の温度に大きな影響を及ぼします。日光を受けやすい屋根の断熱では遮熱の効果も取り入れるようにしましょう。

屋根を断熱する工法としては「天井断熱工法」と「屋根断熱工法」があります。それぞれの違いについて確認しておきましょう。

/// 5-2.天井断熱工法

天井断熱工法は最上階の天井内部(屋根裏)に断熱材を敷き詰める工法です。天井裏から屋根までは屋外と同じ扱いとして、住環境である室内に外環境の熱を伝わりにくくします。
工事費用は屋根断熱より安く済みます。古い家でも壊す部分がほとんどないのでリフォームにも適しています。ただし吹抜け天井を採用している場合は断熱材を敷き詰める天井が存在しないので行うことができません。
断熱効果は屋根断熱工法より劣ってしまいます。天井に隙間なく敷き詰めても柱など保護しきれない部分やごく小さな隙間からも熱が伝わりやすくなってしまうからです。天井断熱工法では屋根裏に溜まった熱が逃げにくいので建物全体のとしては熱くなったままというのが大きな特徴です。

/// 5-3.屋根断熱工法

屋根断熱工法は屋根材の下に断熱材を敷き、屋根全体で断熱を行う工法です。屋根から建物に伝わる熱を遮断するので建物全体で断熱を行うことができます。天井断熱工法より高い断熱性能を発揮します。そのため屋根に塗装する際は遮熱塗料と合わせることでさらに断熱性能を高めることができます。
工事は屋根材の下に断熱材を入れなければならいので外側から行う必要があります。リフォームの際は屋根材を剥がさなければならないので工事も大掛かりなものとなります。足場の設置などでさらに費用が大きくなるので、屋根断熱を採用するのは新築や屋根塗装など、屋根のメンテナンスを行う際が適しています。

6)窓の断熱

/// 6-1.窓断熱のポイント

外壁の断熱性能では開口部と呼ばれる窓や玄関など、外壁以外で外に面している場所を断熱することも重要です。屋内への熱の流入は開口部が40%以上影響しているという実験結果もあるほどです。

窓の断熱では配置と材質が大きなポイントとなります。開口部が大きくなるほど影響も大きくなります。窓は配置する場所と熱を伝えにくくするガラスの構造とサッシの材質で断熱を行います。窓を設置する場所や大きさの注意点と断熱性能を持った窓の種類について理解しておくことが大切です。

/// 6-2.窓の大きさ配置の影響

窓は光を取り入れるのと空気の流れを良くする2つの機能を持っています。しかし断熱の視点では外に熱を逃がす大きな穴となってしまいます。そのため窓の大きさと配置には特に注意が必要です。
断熱性能を高めるためにはできるだけ大きな窓は避けます。大きな窓が多い部屋は解放的で明るく、あこがれる人が多いデザインです。熱は空気だけではなく光からも室内に入ってきます。窓ガラスがどれだけ熱を伝えにくい素材だとしても、光が入るということは熱を取り込むことになります。

大きな窓はリビングなど広くて頻繁に人が集まるような場所に限定するのがおすすめです。採光と換気の効果が少ない場所ではできるだけ小さい窓にするか配置を避けます。特に天井窓は屋根断熱が難しく、天窓は熱の侵入を防ぐことができません。不要な窓を減らすことで結果的に冷暖房費を抑えることができます。新築では窓の大きさと配置を設計士とよく相談しておきましょう。

/// 6-3.窓のガラスとサッシの種類

窓はガラスの構造とサッシの材質で断熱を行います。どのような種類があるのか基本的な種類についてしっておく必要があります。実際に選ぶ際は断熱性能に関する表示を確認して選ぶようにしましょう。断熱性能を持った窓には「省エネ建材等級」という表示がされています。4つの「☆」があり、塗りつぶされた星が多い程高い等級を表しています。

窓ガラスの断熱はガラスの層と厚みによって変わってきます。ガラスの厚みと空気の層で熱を伝わりにくくします。窓と外壁のつなぎ目として、サッシの材質も窓の断熱性には大きく影響します。断熱性の高い窓ガラスとサッシの種類について確認しておきましょう。

ペアガラス

外側と内側にそれぞれガラス面があり、その間に空気の層があります。2枚のガラスで空気の層を作っている構造です。

トリプルガラス

ペアガラスの構造に加え、さらに中間にもう1枚ガラス面があります。合計3枚のガラス面と2つの空気層でさらに断熱効果の高い構造になっています。

樹脂製のサッシ

樹脂製サッシは熱伝導率が低く、断熱性能に優れた材質です。従来のサッシは安価で加工がしやすく、軽くて丈夫なアルミ材質のサッシがほとんどでした。しかしアルミは熱伝導率がとても高く、断熱には向かない素材です。窓を選ぶ際はサッシの材質にも気をつけましょう。

7)玄関の断熱

/// 7-1.玄関断熱のポイント

玄関は窓と同じように外壁の開口部として断熱効果を弱めてしまう場所です。玄関はドアの構造と材質が断熱効果を高めるポイントになります。熱を通しやすい材質で大きな玄関であれば、それだけ断熱性能は低くなってしまいます。玄関は家に1つですが、建物全体の断熱性能を下げるのに十分な大きさがあります。断熱性能を高めるには住宅内部と外の環境をできる限り隙間なく隔てる必要があります。
断熱材の施工では少しの隙間で断熱性能が大きく損なわれるほど、隙間なく断熱することを重要としています。断熱性が弱く、風通しの良い玄関ドアは断熱性からすると大きな穴でしかありません。玄関の構造と材質を知り、断熱性の高い玄関を選びましょう。

/// 7-2.断熱性の高い玄関の構造

玄関ドアは家の中で最も開閉の多い場所です。そのため気密性よりも開閉の利便性を優先されてしまいます。構造によっては住宅全体の断熱性を大きく損なってしまうものがありますので気をつけましょう。玄関の構造で注意すべき点を以下にまとめたので確認しておきましょう。

引き戸よりドア

断熱性の高い玄関では引き戸よりドアがおすすめです。引き戸は横にスライドするためどうしても上下に車輪とレールが必要になります。そのため気密性が弱くなる特徴があります。ドアであれば接続部がパッキンなどで密着し隙間風を防ぐことができます。

採光窓に注意

玄関を明るくするために採光窓をドア本体や子扉につけている場合があります。ガラスが断熱構造になっていても日差しが熱を伝えてしまいます。断熱性能を高めるためには大きすぎる採光窓には注意が必要です。すりガラスの物を選ぶ、ガラスは断熱構造になっているかなどを確認するようにしましょう。

/// 7-3.ドアの素材と断熱性

断熱性の高いドアは内部に断熱材が敷き詰められています。断熱性の高いドアを選ぶには断熱材の隙間が少なく、熱伝導率の低い外装でできたものを選ぶようにしましょう。

窓は断熱材の穴

ドアには光を取り入れるために窓が付いているものがあります。断熱性を高めるためにペアグラスなどを使っているものもありますが、それでも断熱材より効果は劣ります。断熱性能を高めたいのであれば窓は少ないものを選びましょう。

木製素材が効果的

断熱性能を高めるために木製ドアを使う住宅が増えています。ドア板内部に断熱材を敷き詰めて窓のような断熱材の切れ目がないドアでも、ドア本体の外装から熱が伝わってしまいます。玄関ドアではアルミやスチールなど金属が主流でした。金属は熱を伝えやすいのでドア板の内部で断熱しても結局ドア全体が外の熱を伝えてしまいます。
木は熱伝導率が低いので断熱材と合わせることで高い断熱性能を発揮します。

8)断熱材の種類と選び方のポイント

ここまで住宅の断熱性能を高めるポイントを解説してきましたが、最後に断熱材の種類と選び方のポイントについて確認しておきましょう。断熱に使用する素材の種類、選び方の基準、施工時の注意点はどの場所で断熱を行うにも共通するポイントです。

/// 8-1.断熱材の種類

断熱材には様々な形状や成分の違いによる材質が存在します。その中で共通する特徴を3つに分けることができます。それぞれどのような特徴があるのかは基本的な知識として確認しておきましょう。

繊維系断熱材

代表的な素材:グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー
ガラス・鉱物・紙などを原料に綿状に加工した断熱材です。高密度で綿状に加工された繊維の間に無数の細かい空気の層があり、熱が伝わるのを防ぎます。防音などの効果も高い素材ですが湿気や結露に弱い特徴があります。

発砲プラスティック系断熱材

代表的な素材:硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン、フェノールフォーム
プラスティックを原料に様々な加工を加えた断熱材です。いわゆる発泡スチロールも含まれます。板状に加工され、内部の気泡が断熱効果を発揮します。軽くて扱いやすいのですが割れやすさと燃えたときの有毒性に気を付ける必要があります。

天然素材系断熱材

代表的な素材:羊毛 炭化コルク
人が科学的な変化を加えず、身近な素材を用いた断熱材です。自然の物なので環境や人体にも影響が少ない素材です。住宅で多量に使用するには価格が高くなるため使われる機会は多くありません。

/// 8-2.断熱材の選び方

断熱材は安くて断熱性能が高ければ良いというものではありません。住宅に使用し、壁越しに生活を共にする材料として気を付けるべきことがあります。

燃えにくさ

住宅に使用する素材として燃えにくさはとても需要です。近隣で火災があった際、直接外壁が燃えなくても長時間熱を受け続けると内部から発火することがあります。家全体を包み込む断熱材が燃えやすければ日はあっという間に広がってしまいます。安全性を考えて燃えにくい素材を選ぶようにしましょう。

有毒ガスの発生

断熱材では様々な化学物質を使用していることが多くあります。火災の際に発生するガスによって起こる2次被害についても注意が必要です。屋内で吸ってしまった場合や近隣へ煙が広がった場合も考え、有毒ガスが発生しない素材を選ぶことも大切です。

廃棄処分費用

断熱材は処分する際のことも考えて選ぶようにしましょう。断熱材は素材によって処分方法が異なります。リフォームや取り壊しを行う際に他の建材と一緒に廃棄できる場合と、分けて処分しなければならない場合があります。手間や廃棄処分費用がかかります。あとから思わぬ出費にならないように、廃棄処分費用についても確認して選ぶようにしましょう。

/// 8-3.断熱施工の注意点

良い素材を使用しても施工が間違っていては効果が発揮できなかったり、他の弊害が起きたりすることがあります。断熱施工に関しては施工店からしっかりと説明を受け、どのようになっているかポイントをおさえて確認しておきましょう。

気密はとれているか

断熱性能を高めるには素材以上に施工方法が重要です。良い素材を選んだからと言って安心してはいけません。しっかりと隙間なく敷き詰められていなければそこから熱が漏れて断熱効果は半減します。施工実績や気密性の証明をしてくれるなど、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
施工の際、どのように気密を確認しているのか、方法を聞いてみましょう。

結露対策はどうしているか

結露は断熱の大敵です。断熱を行うには気密性が必要ですが、湿気をなくすことは不可能です。外壁と断熱材の間で必ず温度差が生じ、そこに結露が発生します。放置しておくと断熱材の劣化や重みで隙間ができることがあります。結露対策はどうなっているのか、設計時に確認しておきましょう。

エアコンは建築時に取り付ける

建築後にエアコンを取り付ける場合、壁に穴を開けなくてはなりません。穴をあける際は断熱材にも穴を開けます。せっかく隙間なく敷き詰めた断熱材に、隙間を作ることなく外側から穴をあけてホースを通すことはほぼ不可能です。断熱性能を弱めてしまわないためにもエアコンの取り付けは家を建てる際に計画的に行いましょう。

9)まとめ

住宅の断熱性能を高めるためには「外壁」「床」「屋根」「窓」「玄関」の5つのポイントでしっかりと断熱を行うことが大切です。それぞれ熱の伝わり方と効果的な断熱を理解しておけば無駄な費用を減らすことにもなります。
今後省エネ住宅義務化が進んでいく中で、将来の変化に合わせた新築住宅にすることで建物の価値も高めることになります。
断熱で失敗しないために素材の特徴と選び方のポイントも参考にしてください。

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