全館空調で知っておきたい!電気代と快適さのポイント

はじめに

「全館空調って快適だと聞くけど、実際電気代はどうなの?」
「費用面や維持費用は、ルームエアコンよりお得になるの?」
全館空調を導入するにはお金もかかるし、途中でやめることができないので、維持費や導入後の効果について慎重に判断したいですよね。実は全館空調には家や家族の特徴によって向き不向きがあります。全館空調を導入するには特徴を理解しておく必要があります。

今回は全館空調の電気代や設備費用、効果のメリット、デメリットについて解説しています。全館空調の良いところと悪いところをしっかり見極め、導入するかどうかの参考にしてください。

1)全館空調とは

まず初めに全館空調とはどのような空調のことなのかという前提を確認します。「もうわかっているよ」という人は読み飛ばして次の章へ進んでください。

/// 1-1.全館空調の仕組み

全館空調は家の壁や床、天井の中に空調のダクトを通します。天井等に設置された空調機からダクトを通じて家中の空気を調整する設備です。室内を温めたり冷やしたりしながら温度を一定に保つことができます。
ダクトは壁や天井に開けられた通気口につながり、そこから排気と吸気を行います。空調機は設定された室温に適した冷暖房を行いながら、換気など空気の管理をするのも大きな特徴です。

/// 1-2.冷暖房だけじゃないの?

家の中の換気は意外と重要です。同じ空間の空気を入れ換えずにいると、人体に有害なガスが増えてしまうからです。また、汚染された空気が発生すればダクトを通して家中に広がることになります。
全館空調では、家中の空気をダクトでつなげるとことで、空調機が家全体の温度調節や換気、フィルターを通して空気をきれいにするなどの管理をしてくれます。

/// 1-3.全館空調が人気の理由

全館空調の売り込みポイントは2つあります。

・いつでもどの部屋でも快適な温度
・一定の温度を効率的に保つことで省エネ

全館空調は家中、24時間を通して快適な温度に保ってくれます。例えば寒い日に家から帰ってきたとき、通常の暖房では温まるまでに時間がかかります。全館空調は家中の温度を一定に保つので、外から帰ってきても快適な温度のままです。

「省エネ」という点も全館空調の売り込みポイントです。
エアコンの冷暖房では設定した温度にするために温めたり冷やしたりするまでのエネルギー消費が大きくなるという特徴があります。温度を急激に上げたり下げたりしたときに大きなエネルギーを使うからです。こまめに着けたり消したりすることは、かえってエネルギー効率が悪くなってしまいます。
全館空調では家全体という範囲で温度を一定に保つことで、各部屋でエアコンをつけたり消したりするより省エネ効果が高くなります。

2)ルームエアコンとの電気代比較

全館空調は快適で省エネ効果もあり、電気代も安くなる?そんな都合の良い話は本当なのでしょうか?
全館空調にはメリットも多いですがデメリットもあります。両方をよく知り、検討することが大切です。

/// 2-1.電気代の相場を比較

結論から言ってしまうと、電気代は高くなる傾向です。
全館空調の電気代の目安は、一般的な40坪くらいの住宅の4人家族で生活した場合、8,000円~15,000円/月が目安となります。

全館空調の電気代は機種や住宅の断熱性、寒冷地などの地域差によっても大きく異なります。

全館空調は温度を調節するだけではなく吸排気や空気清浄の管理など他にも電気を消費します。ルームエアコンを使った場合と全館空調の電気代を比較して、「安くなる」という表示がされている場合は前提条件の違いについて注意が必要です。

/// 2-2.稼働数と頻度の違いに注意!

全館空調とエアコンの電気代を比較する場合前提としている環境に注意しましょう。
例えば4人家族で4台程度のエアコンを稼働させた電気代と比較されていたとします。数字だけを見ると全館空調の電気代が安く見えるかもしれません。

しかし、エアコンは使わない時期もあります。全館空調はどの季節もつ稼働し続ける必要がります。また、4人家族で計算した場合でも、お子さんが家から出ていく年になればエアコンの稼働台数は減ります。家族が減っても全館空調の稼働は変わりません。

一般的な家庭でのエアコン使用頻度での電気代と比較する表を見たときは、このような違いに注意しましょう。電気代の比較は全館空調がどのくらいの電気代をずっと使い続けるか。ということが大切です。

/// 2-3.断熱性能が高い家が前提

全館空調を効果的に使うには、断熱性能が高い住宅であることが前提となります。全館空調は、家の中を設定温度にした後も温度が変わらないように調整しますが、断熱性能が低い家では外気の影響を受けやすく、家の中の温度を保つのに大きなエネルギーを必要とします。

現在の建築基準では断熱等級4以上となっていますので、基本的な断熱性能は確保されています。しかしもっと断熱性能の高い家もあるので、どの程度の断熱性能を前提としているかということが大切になります。
全館空調の電気代は、どの程度の断熱性能の住宅を基準としているかという点に気を付けて情報を確認しましょう。

3)全館空調の初期費用

全館空調を導入するのに考えておくべき費用は電気代の差だけではありません。この章では全館空調導入にかかる初期費用について確認しておきましょう。

/// 3-1.導入の初期費用

全館空調を導入する際の初期費用は、100万円から300万円です。導入には設備の種類や規模に応じた様々なコストがかかります。

全館空調の導入費用内訳

・空調機
・室外機
・ダクト
・設置施工費
・オプション費用

全館空調の設置費用は一般的に延べ床面積あたりの計算で変わってきます。それに加えて空調機の性能や機能のオプション費用が発生することもあります。

全館空調の初期費用は、100万円から300万円程度が相場で、建物の条件や要件によって価格が変動します。

/// 3-2.建築時の追加費用

新築で全館空調を導入する場合、設置業者と建築業者が異なると、追加の工事費用が必要となる場合があります。

建築と全館空調が一貫して行われる場合は建築費用に設置費用が組み込まれて提示されます。しかし、建築業者と設備設置業者が異なる場合は施工に関する費用を別で支払わなければなりません。
建築中に全館空調を追加する際は、設置業者と建築業者の連携が必要です。異なる業者が関与する場合に追加の工事費用が発生する可能性については考慮しておきましょう。

4)全館空調の維持費

/// 4-1.全館空調の定期的なメンテナンス

自分で行う定期手的なメンテナンスとしては、吸排気口の掃除を1~3か月程度の期間で行う必要があります。
また空調で空気をきれいにするためのフィルターも汚れや劣化によって交換が必要です。フィルターの価格相場は5,000円~10,000円となっています。

定期的なメンテナンスは、システムの効率的な動作や長寿命化に必要不可欠です。フィルターの掃除や交換は空調機の性能を維持する上でも大切なお手入れです。定期的な清掃や交換によって、空調システムの維持管理が行われます。

/// 4-2.定期点検

全館空調は1年を通して稼働しています。空調の不具合や汚染が発生すると、住宅内の衛生状態に関わってきます。全館空調の異常や汚染が起きないように専門家による定期的な点検が必要です。
全館空調の定期メンテナンスには、年に1~2回の定期点検が必要であり、その費用は1万円~4.5万円程度です。
定期点検は、機器の異常や劣化を早期に発見し、適切な対策を行うために不可欠です。これによって、将来的な故障リスクを軽減することにもなります。

定期点検では、各部品の動作確認や衛生状態の確認などが行われます。異常が発見された場合には、修理や部品交換が行われ、システムの安定性が維持されます。
全館空調の定期点検は、年に1~2回の定期点検パック料金などを設定しているメーカーもあるので、設置前に確認しておきましょう。

/// 4-3.寿命と交換費用

全館空調機の保証期間は多くのメーカーが10年程度を設定しています。家に住む期間を考えると、10年というのはあっという間です。10年で必ず壊れるわけではありませんが、保証期間を超えて故障した場合には自費での交換が必要です。

機械の寿命に関しては寒暖差など環境による違いやメンテナンスによっても変わります。部品の交換でも5万円~30万円程度かかることもあり、何度も修理する可能性を考えるのであれば機器の交換を検討も必要です。

交換費用は、空調機や室外機の交換として、機種の価格によりましが、30万円~100万円程度が必要となります。交換費用は、機器の規模や取り付け場所によって異なります。

5)全館空調を導入するメリット

電気代も高くなり、設置費用や維持費用もかかるのに、なぜ全館空調を導入するのでしょうか?
この章では費用よりも快適さを重視した全館空調のメリットについて解説していきます。

/// 5-1.足元から快適な空調管理

家の寒さや暑さを感じる理由は外気だけではなく、家の壁や床の温度も大きな影響を与えます。全館空調は家全体を温めることができます。家の壁や床も快適な温度にしてくれるということです。人の体が接する床や壁の温度も変化が少なくなるので家中いつでも快適な温度が保ちやすくなります。

/// 5-2.一定の室温が体の負担を軽減

温度差は体に負担をかけることがあります。冬の寒暖差はヒートショックを引き起こし、心筋梗塞などのリスクを高めることが知られています。体は寒暖差に対応しようと機能を働かます。こうした負担が病気の原因になることがあります。

全館空調は家のすべての部屋で一定の温度を保つため、負担が少なくなります。一方、部分的な冷暖房装置は室温を急速に設定温度に近づけようとするため、体温との差が大きくなります。こうした体への負担が減るため、全館空調を利用する人は快適さを感じることができます。

/// 5-3.自動換気で空気がきれい

全館空調の空気清浄機能の例

・塵やほこりの除去
・花粉除去
・加湿機能
・脱臭機能
・カビの胞子除去
・アレルゲン物質の除去

全館空調の換気システムは、空気を効率的に循環させるだけでなく、清潔に保つ機能も重要です。家中の部屋を空調でつなげると、汚染した空気も全体に広がるリスクがあるからです。

全館空調の空気管理システムは、メーカーによって特徴が異なります。全館空調は電気代や温度管理の効率だけでなく、空気を清潔にする性能も快適な住環境に大きな影響を与えます。

6)全館空調検討のポイント

全館空調の性能を発揮するためには全館空調の特徴を理解することです。全館空調には向いていると向いていない家があります。この章では全館空調の向き不向きと特徴について解説します。

/// 6-1.全館空調に向いている家

全館空調に向いている家の例

・部屋数が多くエアコンの稼働率も高い
・一年中快適な温度で暮らしたい
・寒冷地など常にエアコンが必要な地域

全館空調は家全体の冷暖房を効率的に行います。この性能を発揮するにはエアコンの使用台数や稼働率が高いほうが向いています。1つの建物の中で多くの人が利用することで効率が高くなるからです。
また、省エネを目的にするのではなく、快適な温度で過ごしたい人や、温度差による体に負担をかけたくない人には向いています。例えば高齢者や持病のある人などには過ごしやすい住環境を作ることができます。
エアコンをたくさん使う家庭や、温度の変化が辛い、快適な温度で暮らしたいという人は、全館空調のメリットを活かすことができるでしょう。

/// 6-2.全館空調に向かない家

全館空調に向かない家の例

・断熱性が低い
・空き部屋が多い
・人がいる時間が少ない

全館空調は高い断熱性能を前提としています。これから新築を建てられる人は基準として高い断熱基準になっているのであまり問題はありませんが、断熱性能が重要であることは覚えておきましょう。
全館空調は個室ではなく家全体の空調を管理しますので、空き部屋が多ければそれだけ無駄なエネルギーが多くなってしまいます。また日中から夕方、夜までと人が出てしまうご家庭の場合も電気代の消費が大きくなってしまいます。電気代の無駄があまりに大きくなってしまう場合は検討したほうが良いでしょう。

/// 6-3.使い方の向き不向き

全館空調に向いていない使い方

・個々の好みに合わせた温度にしたい
・温度をこまめに変更したい
・使わないときは切っておけばいいと思っている

全館空調の導入には家の向き不向き以外にも次のような使い方を想定している家では導入に不向きかもしれません。

全館空調は家全体の温度を調整するので家族それぞれの好みに合わせることは得意ではありません。例えば夏の暑い日に帰ってきて、強風にした冷房の風を浴びるようなことはできません。
また、家全体の温度を変えるには時間がかかるので、温度を変えたくてもルームエアコンで温度を変えるより時間がかかります。

電気代に関しても、節約するために「使わないときは切ってしまえばいい」とお考えの人もいるようですが、冷暖房は切っても最低限空調は動かしておく必要があります。ダクト内の空気の流れを止めてしまうと中でカビや雑菌が繁殖しやすいからです。カビなどで汚染されてしまうと専門的な清掃やダクトの交換が必要になってしまうこともあります。

7)まとめ

全館空調の電気代はルームエアコンと比較して基本的には上がる傾向です。
また、初期費用や維持費用を考えても経済的コストはルームエアコンより高くなるケースが多くなります。

エアコン台数が多く、たくさん稼働させている家庭と比較すれば、電気代や諸費用は同じくらいか、状況によって少し安くなることもあるかもしれません

全館空調とルームエアコンを比較する際はそれぞれの前提条件についてよく考えて判断することをおすすめします。
費用面だけではなく、家の中を快適にしてくれる設備として、家族構成や使い方、将来の変化も考慮して導入を検討されると良いでしょう。

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