【防災の家2023】レジリエンス住宅は快適で災害にも強い家

はじめに

地震や津波、水害が多く、住宅の防災機能について不安に感じている人が増えています。
災害に強い家として「レジリエンス住宅」という考え方についてご存じでしょうか?
災害に対する備え方を間違えると、お金をかけても意味がありません。

この記事ではレジリエンス住宅とはどのような機能で私たちの生活を支えてくれるのか、レジリエンス住宅の役割や具体的な機能について解説しています。

この記事を読み終える頃にはレジリエンス住宅に必要な要素を理解し、災害に備えた家づくりが分かるようになります。
これから新築やリフォームをお考えの方、災害や防災について不安のある方は是非参考にしてみてください。

1)レジリエンス住宅とは?

/// 1-1.住宅で想定すべき災害

日本は地震大国と言われているだけではなく、昨今の温暖化や異常気象の影響で生活を脅かす災害の種類や発生数も増加しています。
初めに住宅で想定する災害について確認しておきます。

住宅で想定する災害
  • 地震
  • 津波
  • 洪水
  • 豪雪
  • 土石流
  • 竜巻
  • 台風
  • 噴火

災害はそのときだけではなく、2次的な被害によって私たちの生活を大きく変えてしまいます。
2次的な被害では次のようなことが起きます。

災害による2次的被害
  • 家屋の損傷や倒壊
  • 火災
  • 浸水
  • 停電
  • 断水
  • 交通網の遮断
  • 危険物の飛来

災害とそれによって引き起こされる2次的な被害から家族と生活を守るにはどうしたら良いのか?ということで今注目されているのが災害を想定したレジリンス住宅です。

/// 1-2.レジリエンス住宅の防災機能

レジリエンスという言葉は回復力、復元力といった意味で心理学や物理学でよく使われます。国家レベルで災害に備えるという意味で、国や政府はレジリエンスを「強靭な」という意味合いで表現しています。

「災害に強い家」として、レジリエンス住宅では災害に備えた3つの防災機能を重視しています。

レジリエンス住宅の機能
  • 平常時の快適な生活(非災害時)
  • 災害発生時の安全確保
  • 災害発生後の生活の継続

従来の防災では耐震性の強化や災害発生時のライフライン確保などが個々で考えられていました。
レジリエンス住宅では上記3つの防災機能を軸として、防災に対する考え方に一貫性があります。防災に必要な機能を明確にすることで「災害に強靭な住宅」を実現しています。

/// 1-3.レジリエンス住宅のメリット

レジリエンス住宅では災害の発生前から発生後までを考えることによって、次のようなメリットが挙げられます。

レジリエンス住宅のメリット
  • 安心で快適な生活の確保
  • 災害発生時の命を守る
  • 災害発生後の命をつなぐ
  • 復旧、回復が早くなる

レジリエンス住宅では災害発生前の快適な生活も視野に入れて考えます。
防災の機能を災害時だけではなく平常時でも活用できることが今までの防災の考え方とは大きく異なる点です。
災害発生時に命を守るだけではなく、停電や断水などの雷雨ラインが途切れることの想定や災害を受けることを前提として、復旧を早くする考えを持っているという点が大きな特徴です。

/// 1-4.レジリエンス住宅のデメリット

レジリエンス住宅のデメリットは費用が高くなってしまうことです。
災害を想定した設計や設備にはやはりそれなりの費用が掛かります。

耐震性や災害時の安全確保を考えるとそれなりの設計技術が必要になります。耐震性の補強や発電システム、蓄電、貯水槽を設置すればそれだけ費用が掛かってしまいます。

防災設備を増やせば良いわけではなく、適切な備えと予算の範囲内で考えることも大切です。家を建てる地域で起こりうる災害を想定し、必要性の高い防災設備から選ぶようにしていきます。

2)レジリエンス住宅3つの防災機能

レジリエンス住宅では「平常時」「災害発生時」「災害発生後」の3つのタイミングで防災を考えます。それぞれがどのようなことを想定しているのかを知ることでレジリエンス住宅を作るために必要な設備の選び方、判断基準が分かるようになります。

/// 2-1.平常時の生活(非災害時)

レジリエンス住宅では災害が発生していない平常時でも快適に生活できることが必要だと考えています。

防災に役立つ設備でも、使わないときに邪魔で生活空間を圧迫したり、防災設備があることで事故が起きたりしては安全で快適な住宅とはいえません。
また災害時に安心できる生活環境ということは、平常時でも快適に使用できるという共通点があります。

レジリエンス住宅では防災だけに特化するのではなく、安心で快適な住宅本来の機能も重要であるという視点を持っています。

/// 2-2.災害発生時の安全確保

災害発生時に最も重要なのは「まず命を守る」ということです。そのためレジリエンス住宅では「災害発生時」に着目した命を守る機能を重要と考えています。

災害時に命を守る方法として、様々な視点から考えることが大切です。
例えば大きな地震を想定した場合、まず命を守るために次のような備えが必要になります。

地震に備えた命を守る家の機能
  • 潰れない寝室
  • 非難しやすい間取り
  • 軽い素材の家
  • 揺れても壊れにくい家

地震や津波、水害など、人の力ではどうにもならないほどの強い力が襲ってくる災害では、どうやって命を守るのかということが最優先になります。

/// 2-3.災害後の生活の継続

レジリエンス住宅と従来の防災との大きな違いは災害後の生活への備えです。レジリエンス住宅では被災した後のことも考えるということが大きな特徴です。

被災して命は助かったのに、その後に命を落としてしまうケースが多くあります。
例として次のような事例を挙げておきます。

  • 家は無事なのに道路が遮断されて物資も救援も来ない。
  • 家は無事なのに電気・ガス・水道などライフラインが使えない。
  • 避難所に避難したが寒さや熱中症、エコノミー症候群などで死亡してしまう。
  • 家や財産を全て失ってしまい途方に暮れてしまう。

レジリエンス住宅では災害発生時の脅威から命を守れたとして、その次の段階で命を守ることも考えています。
災害後に命を守るための生活環境の確保や、生活を立て直す復元力、回復力という強靭さが必要となります。

3)レジリエンス住宅の防災設備

レジリエンス住宅では具体的にどのような防災機能が考えられるのでしょうか。ここで挙げるものは全てが必要なわけではありません。例えば海のない地域で津波の心配が必要ないように、住んでいる地域で想定される災害によって必要なものは変わってきます。

レジリエンス住宅ではどのように災害に備えるのか、具体的な防災設備や機能について知ることで、必要なものを選べるようにできます。

/// 3-1.防災機能

レジリエンス住宅で求められる基本的な防災機能は次のようなものがあります。

基本的な防災機能
  • 耐震性、免震機能
  • 防火素材、防火設備
  • 避防犯設備

それぞれについて解説してきます。

耐震性、免震機能

地震大国日本では建物の耐震性は以前からも重要視されてきました。
日本では地震の影響を受けない地域はないとさえ言われています。レジリエンス住宅を考えるうえでほぼすべての地域に共通して必要な機能が住宅の耐震性です。

住宅の耐震基準では震度6~7に耐えられる構造が必要とされています。
耐震性が高くて家が壊れなければ安全かというと、そうではありません。地震が起きた際に家具の下敷きになったり、揺れによってものが落ちてぶつかったりすることでけがや死亡につながるケースも多くあります。

地震に対する備えとして「免震」という性能も注目されています。
免震とは揺れる力を上手に逃がすことで、建物だけではなく家の中の人も守ることができます。

防火素材、防火設備

防災を考えるうえで火災に対する備えはとても重要です。火災は単独で起きるものだけではなく、地震など他の災害によって引き起こされることがあります。
実際に日本で起きた大地震でも、その後に発生した大規模火災で命を落とした方がたくさんいます。

防火の考え方として、火災を防ぐためには燃えないことが重要だとされています。
住宅ではできるだけ燃えにくい素材、燃えない素材を使用することで火災の発生を抑制します。
また火災が発生した際に命を守る方法として素早く非難するための火災報知器やスプリンクラーの設置で火災による被害を最小限にすることができます。

防犯設備

防犯設備は意外と見落とされがちですが、とても重要な機能です。
災害時には警察などの公共機関が正常に機能しなくなります。災害時に窃盗や強盗、暴行などの被害に遭うケースが多くあります。

具体的には、割れない防犯用の窓やピッキングされにくい鍵の取り付け、防犯カメラやカメラ付インターホンなどがあります。これらは日常的な防犯としても役立ちます。

災害発生時は特に混乱し、災害に気を取られて犯罪に無防備になりやすい傾向があります。防犯設備を整えて、他人から身を守る機能も災害時には重要になってきます。

/// 3-2.生活維持機能

レジリエンス住宅ではエネルギーを自給することも必要ですが、少ないエネルギーを効率良く使うということも重要です。

省エネ効果を高めるには次のような設備があります。

・自給力
・省エネ

それぞれについて解説します。

自給力

自給力とは主に電気などのエネルギーと水などの最低限の自給力のことです。具体的な設備としては次のようなものが挙げられます。

  • 発電設備
  • 蓄電設備
  • 貯水設備
  • 避難用備蓄庫

発電設備は太陽光発電のような1次エネルギーと呼ばれる石油など他のエネルギーを必要とせずに発電できるものが主流となっています。
作った電気は蓄えることができれば天候など環境条件に左右されにくくなります。
貯水設備は雨水を生活用水として利用できる設備などがあります。
また避難生活を送る期間に必要な非常食や飲料水、衛生用品などを保管しておく備蓄庫の設置もレジリエンス住宅に必要な設備として考えます。

災害発生後からいつまでかかるか分からない避難生活のために、最低限必要なエネルギーや物品への備えが必要になります。

省エネ

レジリエンス住宅ではエネルギーを自給することも必要ですが、少ないエネルギーを効率良く使うということも重要です。

省エネ効果を高めるには次のような設備があります。

  • 断熱効果の高い壁材
  • 換気設備又は換気の良い間取り
  • 採光の効率が良い窓や間取り

レジリエンス住宅ではどれだけ電気に頼らずに快適な生活を送れるかという視点で考えます。
災害時、最悪の場合は発電設備が機能しないかもしれません。電気を使わなくてもできるだけ快適にしておくことで、電力に頼らなくても命をつなぐことができます。
省エネ化は平常時でも電気料金の節約効果があり、レジリエンス住宅の大きなメリットです。

/// 3-3.回復力

レジリエンス住宅では災害後の生活維持の次に、通常の生活に戻る回復方法についても考えます。
災害から命を守り、その後も短期間の生活を維持できたとしても、その後につながらなければ生活を立て直すのは難しくなってしまいます。

そこでレジリエンス住宅では災害に遭うことを想定し、その後の回復方法まで考えておきます。

例えば水害の場合、次のような対策を取ることで、災害からの回復がしやすくなります。

  • 床を高くして床上浸水を防ぐ
  • 床下を水が流れる構造にする
  • 水流の力を受けにくい構造にする
  • 浸水しても腐食防止や洗いやすい構造にする
  • 流されにくい家にする

住宅を早く回復することで生活だけではなく経済的にも精神的にも安心を得ることができます。

4)レジリエンス住宅を建てるポイント

/// 4-1.家を建てる場所も重要

レジリエンス住宅で防災を考えるには家を建てる場所を考えることも重要です。どんなに防災に努めても災害に遭いやすい場所では意味がありません。防災の基本はまず災害に遭わないことから始めます。

例えば
・氾濫しやすい河川の近く
・浸水しやすい地形
・土砂崩れの影響を受けやすい崖の近く

これらは明らかに他の場所よりも災害に遭うリスクが高い場所です。

危険な場所は市役所などのハザードマップで確認することもできます。
家を建てたい場所がどのような地形なのか、ということを事前に調べることが大切です。

リフォームやどうしてもその土地に家を建てなければいけないという場合以外は、家を建てる場所について調べて、できるだけ災害に遭わない場所を選ぶようにしましょう。

/// 4-2.平常時にも使える設備を選ぶ

レジリエンス住宅では平常時に快適な生活を送ることも住宅として大切な要素であると考えます。日常生活の邪魔になるような設備は避け、平常時でも活用できるものを選ぶようにします。

せっかく安全性の高い防災設備を整えても維持できなければ意味がありません。災害時にしか役に立たないものは点検をする機会も減り、維持費用ばかり掛かるようであれば撤去を考えたくもなります。

レジリエンス住宅では防災設備が日常でも役立ち、使いながら点検もできますし、エコで経済的であれば維持していく価値も実感することができます。

/// 4-3.命を守るものから優先する

防災のための設備を揃えるためには費用が掛かります。予算を気にしないという人はいないと思います。予算内で設備を考える際には命を守るものを優先するようにします。

例えば雪が多く寒さが厳しい地域では断熱効果や暖房設備がないと命に関わることもあります。灯油ストーブなどでも対応可能ですが道路が遮断されてしまうこともあります。

ただし、命を守ることだけを優先に考えていてはきりがなく、日常で不要な設備ばかり増えてしまいます。
レジリエンス住宅として日常生活も快適にする機能を持ち、それでも予算内で迷ったら命を守る可能性の高い設備を優先にすることがポイントです。

5)ZEH(ゼッチ)の補助金を利用する

レジリエンス住宅を建てる際に補助金を利用したい場合はZEHの補助金を申請するという方法があります。
ZEHとはどのような制度なのか、どうすれば補助金をもらえるのかについて解説していきます。

/// 5-1.ZEHとは

ZEHとは「ネット ゼロ エネルギー ハウス」のことで、経済産業省と国土交通省、環境省の3省が連携で行う支援事業です。
事業の目的は戸建て住宅を省エネ・省CO₂化を促進し、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて脱炭素社会の推進を目指しています。

ZEHの目指す住宅とは、太陽光発電等を利用して発電を行い、住宅も省エネ化することで1年間に産出するエネルギーと消費する正味エネルギーが±0以下になる住宅です。

ZEHの事業内容は、省エネ・省CO₂化に向けた住宅として基準を設け、該当する住宅を建築費用の補助を行うというものです。

/// 5-2.ZEHとレジリエンス住宅の違いとは

レジリエンス住宅は災害を含め多くの変化にも適用できる強靭さという意味があります。ZEHはCO₂削減するために、CO₂を産出しない発電と省エネ、蓄電による電力の効率化といったエネルギーという範囲に限られます。
レジリエンス住宅とZEHでは、災害時にも電力供給に頼らずに済むこと、発電や断熱効果で快適な住環境を作れるということが共通しています。

レジリエンス住宅を作る際に、断熱や発電設備を取り入れるのであれば、ZEHの基準を満たして補助金をもらうという方法が可能です。

/// 5-3.ZEHの補助金の基準

ZEHの補助金をもらうにはまず基準を満たす必要があります。
ZEHには段階的に4つの基準があり、補助金をもらうには基準を満たす必要があります。

実際の基準ではそれぞれ消費電力や発電エネルギーなど細かい基準が設定されていますが、全体像として、それぞれの大きな違いについて簡単に解説します。

ZEHを利用した補助金の目安
ZEH 55万円
ZEH+ 100万円
次世代ZEH 100万円+α

ZEH

ZEHの基本的な基準を満たすもので、使うエネルギーより発電するエネルギーが±0以上となる住宅で、ZEH基準とされる断熱効果のある外壁を採用していることが必要になります。

ZEH+

ZEHの基準を満たし、さらに次の3つの内2つ以上の条件を満たす必要があります。

  • 高度エネルギーマネジメントシステムの導入
  • 充電設備の設置
  • さらなる高断熱外皮の採用

ZEHより1段上の設備が必要になるのがZEH+です。
高度エネルギーマネジメントシステムとは、使用したエネルギーを分かりやすく表示したり、不必要な電力を制御したりするシステムのことです。その他蓄電、断熱とさらに質の高いCO₂対策が必要となります。

次世代ZEH+

次世代ZEHではZEH+に加えてさらに必要な設備が増えます。
次世代ZEHではZEH+の条件に加えて次の中からどれか1つ以上設置されている必要があります。

  • 太陽熱給湯
  • 充放電設備
  • 蓄電池
  • 燃料電池

6)まとめ

レジリエンス住宅は大切な家族を守りながら、エコで快適な生活を支えてくれるシステムです。
レジリエンス住宅では地域の特性や災害を想定することで効果的な機能を果たすことができます。防災リュックや基本的な対策と合わせることで万が一に備えることができます。
レジリエンス住宅にするにはそれなりの設備と費用が掛かります。ZEHの補助金等が受けられないかも検討してみると良いでしょう。

レジリエンス住宅について興味がある人は注文住宅や住宅デザイン事務所などの戸建て建築のプロに相談してみましょう。

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